運送業の巡回指導につき評価項目や準備すべき書類は前述した通りですが、書類の分量も多いですし、初めて巡回指導を対応する場合だと「実際、どうやって準備すればいいの?」と悩まれる方もいらっしゃるかと思います。
そこで、当事務所が各社運送事業者の巡回指導に立ち会ってきた経験から「重要と思われるポイント」について解説していこうと思います。
点呼簿・日報
巡回指導の重要ポイントのひとつに、点呼簿・日報などの運行管理書類があります。
点呼簿は点呼を行った「結果」の帳簿ですが、指導員は「適正に運行管理が行われているか」を点呼簿・日報やチャート紙などを付き合わせながら細かくチェックしていきます。見るのは直近の一定期間(おおよそ2週間~1ヶ月程度)で、多くの場合は運転者を選択し(例えば、深夜時間帯に勤務する人や勤務時間が長い人など)、その運転手について時系列に日付を追いながら確認します。
確認するポイントはいくつもあります。例えば、以下のような事項です。
点呼が適正に実施され、記録されているか。
点呼簿は点呼の最終的な記録です。
運転手が就業開始から運行を開始するまでの流れとしては
(1) 運転者が車庫に移動後、車両の日常点検をして点検簿に記録します。(運転者が点検を行う場合)
※日常点検が終わっても点呼を受けるまでは車両の運行は出来ません。
(2) 整備管理者または補助者が点検記録簿を確認し『当該車両の使用の可否』を判断します。
(3) 運行管理者または補助者が運転者の点呼を行い『運行の可否』を判断します。
・3分の1以上は運行管理者が点呼を実施しなければなりません。
・運行管理者も「選任された運転者」であれば運行ができますが、自分で自分を点呼することは出来ませんので、必ず自分以外の運行管理者または補助者が点呼を実施します。
・アルコール検知器の結果や健康状態等(睡眠不足の確認などを含む)をチェックし、点呼簿に記録していきます。
・2泊3日以上の運行であれば、運行指示書により指示を行います。
・指示事項等を伝えて(例えば雨天時スリップ注意など)点呼簿にも記載します。
・点呼は「対面点呼」が基本となります。(IT点呼の許可を受けている場合はIT機器による点呼が可能です。)
・やむを得ない場合に限り「電話点呼」で実施します。(泊を伴う運行で運転者が遠隔地で点呼を受けるような場合)
※運行管理者が不在だった、のようなケースは「やむを得ない場合」とは認められません。
(4) 運転者が車庫に移動し、運行を開始します。
拘束時間、運転時間等は適正か。
(1) 拘束時間
・原則1日13時間まで(但し、週2回までは16時間まで可)
・原則1月293時間まで(但し、6ヶ月までは年3516時間を超えない限り、月320時間まで可)
(2) 休息時間(勤務終了から次の勤務開始まで)
・1日8時間以上
(3) 運転時間
・連続運転4時間まで(4時間を経過する前に30分以上の休息時間を取る)
・1日の運転時間は2日平均で9時間まで
(4) 休日
・毎週1日以上、または 4週間に4日以上
・休日労働は、2週間に1回まで
各帳簿の整合性が取れているか。
各帳簿は互いに関連しているため、帳簿間の整合性が保たれていることが重要です。
・点呼簿
・日常点検記録簿
・日報
・運行指示書(2泊3日以上)
・チャート紙またはデジタコ記録簿